クローン技術のメリットに対するキリスト教の呪い
アメリカの無神論者フランク R.ツィンドラー(Frank
R. Zindler) の論文(American Atheist
Journal Winter 2001/2) の概要
どんぐりは樫の木ではない。どんぐりを焼くのと山火事を起こすのは同じではない。ロシア正教はこんな単純な現実さえ理解出来ないらしい。ロシア教会は最近クローン技術で作られた六細胞の人間の胚を死なせた事は殺人犯に等しいとの見解を公表し、ローマ法王もこれに賛同した。アメリカ議会でもそれに対し議員全体が声をそろえて「アーメン」を合唱した。この告発の非合理性を理解できる議員はほんのわずかしかいないらしい。
殺人には殺される人(対象)が必要だ。どうして細胞の塊を人と間違えることがあるのか。キリスト教の教義でさえ魂の入っていない細胞は人とはみなさない。教会の非科学的意見によると、精子が卵子に入る瞬間にも魂が入るということだ。クローンの場合、精子は全く使用されない。勿論、試験管の中のクローン細胞の塊に魂など入っていない。非科学的な宗教的理性によっても魂など入っていないはずだ。魂がなければ人間ではなく、従ってそれを殺しても殺人にはならない。後には残るのはただの細胞の塊だ。(クローン細胞から育った人も人間ではないのかも。魂がなければ教会が救うべき物は何もない。なんという悲劇!)
それではどうしてクローン技術は教会や政治家などの怒りを招くのだろうか。どうして彼らはこの技術を禁じるのだろうか。どうして彼らはこの有益な医学研究を妨げるのだろうか。クローン技術は、魂や幽霊などの宗教的空想が聖職者のまやかしでしかないということを明確にしてしまうからだ。クローン技術は、人類が分子レベルの働きにおいて他の生物となんら変わりのないことを示すからである。我々は物質とエネルギーのシステムにすぎない。それ以上の何ものでもない。There
is no ghost in the machine!
牧師や司祭などの聖職者は魂のディーラーであり、魂のない現実では失業者となり、儲けが得られなくなるということだ。政治家は、従順で批判することのない大衆を供給するために牧師や司祭などの説教者に依存している。こういう魂のディーラーを破産させることは彼らの利益に反することなのだ。
もし、アメリカ議会が治療のための人間クローニングを禁止し、百万ドル以下の罰金と最高十年の懲役という法案を通せば、結果は悲惨だ。クローンは治療の点で限りない可能性を秘め、クローンのお陰で我々は超長寿をエンジョイできるようになるかもしれない。自分のクローン胚から取った幹細胞を使い、消耗した器官のスペアを育て、移植すれば、不死身も夢ではなくなる。
従来の内移植と違って幹細胞から育てられた器官は体の免疫システムに負担を与えず、免疫反応も起こらないのだ。老化に従って減少する脳のニューロンの数も幹細胞を使えば脳を蘇らせることもできるだろう。そのためにはクローン胚を「産まれてない赤ん坊」(プロライファーつまり妊娠中絶合法化反対者は不当にも胎児をそのように呼ぶ)まで育てる必要はないのだ。まだ千細胞になっていない胞胚という空洞のボールのような細胞は幹細胞のための最適な素材である。細胞の塊は発達しすぎると、器官や神経や肢体や髪の毛や爪などの体の部分に育つことのできる幹細胞を取るには遅すぎるなのだ。
精神に異常のない人間に、受精卵細胞のような単細胞や初期の胚を破壊する事を殺人に等しい事と考えさせたり、倫理的に問題があるなどと思わせるのは、宗教的迷信に外ならない。クローニングで作った胚は各自の普通の体の細胞と全く同じく、人間になる可能性をもっているに過ぎない。各々の神経細胞、皮膚細胞、内臓細胞や毛嚢(のう)等の核には本人と同じ人間を作る為のすべての情報を持つ遺伝子がある。だから各々の体の細胞はどれも人間になる可能性を持っている。歯を磨いたり、髪の毛を梳かしたり、ただの唾(口の粘膜から離れた細胞が含まれてる!)を飲み込んだり吐き出したりする度に殺人を犯していると言うのだろうか。もしそうだとしたら
何とも酷い大虐殺だ!!!
体の細胞の核を、あらかじめ核を取り出した卵細胞(核なし卵細胞)に移植すると、その結果出来た新しい卵細胞は、胚を作る為の細胞分裂のすべての情報源となる。卵細胞の細胞質に含まれる未知の因子は、移植された核の染色体の特殊化を逆行させ、遺伝子は再び元の若い状態に戻る。現実的な意味では、死すべき細胞は不死の幹細胞に変えられる。幹細胞は自分を再生することだけではなく、卵細胞や精子をも含めて、どんな体の細胞にも変化できるのである。すなわち再特殊化が可能なのだ。その過程で「神の手」を必要とすることはない。必要なのは実験室のスタッフの手のみである。人間と人間の体を理解するのに必要のは神学ではなく科学なのだ。
知識・科学・研究・進歩に対するキリスト教会の抵抗は我々人間を中世の暗黒時代に落とし入れた。解剖学や医学の研究に反対したカトリック教会は何百年にもわたって医学の進歩を妨げ続けた。
アメリカの無神論協会の創立者、マダリン・オヘア(Madalyn
O'Hair)は、キリスト教がなかったら我々人間はもう何百年前に癌を撲滅し、自由や科学の研究を禁じた法王がいなかったらコロンブスはカリブ海の島ではなく月に到着していただろうと述べた。キリスト教の反科学性は再び呪いのように我々人間の幸福を脅かす。
我々は、国民の代表がキリスト教の反科学的なパニックに陥れられ、クローニングや科学そのものを禁じるということがない様に注意しなければならない。国民が最初からそのような代表を選ばないことが一番である。
我々人間は、クローン実験室の成果から将来前代未聞の素晴らしい利益を期待できる。我々の政治家や代表が、自らが「マムシのやから」(聖書の罵倒語)である教会や牧師の脅しをきっぱり撥ね付け、人間本来の利益のために行動することに望みをかけるべきだ。今こそ人類史上最大のチャンスだ。馬鹿馬鹿しい天地創造の空想の為に我々人類の将来をだいなしにしてしまってはならない。
ホルガー ・H・ハウプト